飛距離とロッドレングス
Twitter(未だにXと呼ぶことに抵抗があるジジイ感)でショートロッド愛好家共でやんややんや騒いでいた中で「別にロッド短くても飛距離って普通に出るよな」という話題がでたので、この話題について掘り下げてみたいと思う。というのも一般的にはロッドは長いほうが飛距離がでるとされているし、それ自体は俺も正しいと思う。ただ、いざロングロッドを使用しても(飛距離自体は伸びるには伸びるが)そこまで劇的に伸びるかというとそうでもなく、せいぜい数m伸びるのが関の山である。なぜそうなるのかいうと、ロッドレングスは飛距離に対して関係はしているが最重要要素ではないからである。というわけで「飛距離とロッドレングス」について書いていきたいと思う。
飛距離を出すために必要な要素
ルアーの飛距離の大部分はリリースされた時点の初速により決定される。初速以外の要素としては射出角度やラインの抵抗、飛行姿勢も関係しており、リールの違いやガイドセッティング、ルアーの種類により左右されるのだが、ここで個人の技量差や「どのリールが飛距離が出るか」「どのルアーが飛距離が出るか」を論じても不毛なため、あくまで「同じ射出角度での同リールによる同ルアーでの飛距離」を前提に書いていく。
さて、前述したが飛距離を出すにはルアーの初速が大きなファクターを占めている。斜方投射の水平到達距離は初速の2乗に比例するので(空気やラインの抵抗を考慮しても)概ね初速を大きくするとそれに比例して飛距離も大きくなる。つまり単純化すると初速を上げれば飛距離は伸びるということになる。
初速を上げる要素
まず、ロッドという道具の機能は「荷重により曲がり、その後、元の形状に戻る」ことが挙げられる。このロッドの機能においてルアーの初速を決定しているのは「元の形状に戻る速度」に他ならない。ロッドは曲がらない物体ではないため遠心力がそのまま速度に返還されるわけではなく、あくまで戻る際の速度にて初速が決まる。では、戻る速度が速いロッドとはどういうロッドというとシンプルに「硬いロッド」である。カーボン弾性やテーパーも関係はしてくるが、基本的には硬い物体が曲がった場合、それ相応の速さで元の形状に戻ろうとする為だ。
要するに「(曲げることができるのであれば)ロッドは硬ければ硬いほど初速がでる」のである。この「曲げることができれば」という前提条件が本題のロッドレングスに繋がる。
飛距離とロッドレングス
ようやく本題である。前項にて硬ければ初速が上がると書いたが現実問題として硬すぎるロッドが必ずしも飛距離が出るわけではない。ツナロッドでライトゲームプラグを投げても対して飛ばないのは想像しやすいだろう。あくまで「曲げることができるのであれば」の部分が重要となる。
片持ち梁の曲げモーメントで考えると、モーメントの大きさは荷重と力点までの距離に比例する。つまり同じ重さのルアーを投げる際にロッドの長さが倍になればロッドの先端にかかる力は2倍となる為、同じ硬さであれば長いロッドの方が同じルアーを投げるにしてもよく曲がるということである。日常生活の感覚でも同じ硬さの棒でも長い方がしなりやすいのは想像しやすいだろう。てこの原理みたいなものである。
逆に言えば長さを倍にするのであれば、硬さを倍にしても同じ曲がりが実現できるわけなので、長くした分だけ硬くすることができる。これが長いロッドが飛距離が出るといわれる所以であり、要するに長いロッドはその分硬いので飛距離が出るのだ。ここで忘れてはならないのがあくまで飛距離と相関しているのは硬さであり、長さではないということである。長くても柔らかいロッドなら飛距離は出ないからだ。
むしろ長ければ長いほど振りぬく際に相応の力が必要になる為、ロッドを振る速度は低下する。振る速度が低下すればその分曲げこみも浅くなるため、長くしすぎるのも本末転倒である。「筋力とルアー重量から考えて、曲げられる範囲で長く硬く」のベストバランスが見つけるのが重要となる。
結論
ルアーの飛距離を伸ばすためにはロッドの硬さが最重要要素であり、長さは副次的な要素に過ぎず、長さと飛距離はイコールではない。ただ、現実問題として市販品で長いだけで硬さがないロッドなどほとんどなく、多くは長くなるにつれて硬くなる。ロッドは円錐形状の物体なので当然である。(ロッドパワーは径に比例する)
なので「飛距離=長さ」と単純化しても概ね間違いではないともいえるが、厳密には間違った認識であることは理解が必要だと思う。なぜなら短いロッドでも硬く、そして曲げられる運用をすれば飛距離を出すことは可能だからだ。短くても飛距離が出る、という人はこの辺の選択や運用がうまくいっているのだろう。傾向として長さは飛距離を増大させるが、必ずしもその限りではない。
また、今回はあくまで飛距離という観点からのみロッドレングスについて書いたが、ロッドレングスはそれだけで決定するものではない。魚とのファイトの為の長さや、足場に対応する為の長さなど複合的な要素から決定されるものであるのは留意する必要がある。